2010年01月06日
スタートレック新作映画のノベライズの翻訳(1)
- JNZ
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- カテゴリー:41.STARTREK
昨年公開された、スタートレック(以下、ST)の新作映画のノベライズが角川文庫から発刊されていますが、ちょっとこの翻訳について物申したく。
これまでSTの小説は、一部を除いてハヤカワSF文庫から斉藤伯好先生の翻訳で出ていましたが、氏の逝去によってどうなるのだろうと思っていました。角川文庫から、まずは発刊されたことは嬉しく思います。
ですが、この翻訳はどうにもいただけません。
あらかじめ断っておきますが、私は英語はからっきしダメで翻訳なんて絶対にできません。今回も原書を確認して書いているわけではありません。でも、翻訳された出版物は、もはや日本語の小説です。その日本語が、私から見てちょっと文句を言いたくなるレベルなのが、今回の翻訳なのです。それも1箇所や2箇所ではなく、です。どうにも気になって集中できないので、気になったページに折り目をつけながら読みました。
たとえば、何箇所かに「リードアウト」なる言葉が出てきます。
戦術士官はリードアウトをじっとみつめ、目にしたものを理解しようと努めた。
リードアウトなる用語はST専門用語にはありませんから一般用語です。ですが片仮名で書いて放っておけるほど一般的な日本語でしょうか?
Googleで検索するとCDのセッション終端(lead-out)の解説ばかりがでてきます。手元の電子辞書で調べてみると readout で、「(コンピュータの)解読、読み取り、情報検索」と出てきました。それなら多少の違いはあっても「計器の表示」とでも訳してルビで「リードアウト」と書いておくほうが、よほど日本語になっているでしょう。
次に、パイク艦長がカークら上陸班をシャトルからパラシュート降下させるために、コンソールを操作する場面。
「幸運を祈るぞ、諸君」パイクはコンソールをいじった
いくらなんでも「いじった」はないでしょう。「いじる」を広辞苑でひくと「手でもてあそぶ。確かな方針や目的なしに、あれこれと手を加える」となっています。要するに目的のない行動なわけです。嫌味な書き方をすれば「コラコラそこのボク、勝手にコンソールをいじっちゃダメだよ」と言いたくなります。普通に「操作した」で充分なはずですし、それが自然な日本語です。
次に、U.S.S.ケルヴィンのロバウ艦長が発する命令
「警戒警報イエロー、シールドを上げろ」 (「警戒警報」にルビで「アラート」)
なんだか妙な言い回しだなあ、と思っていたら、3ページ後には
「レッド・アラート発令! 戦闘体勢につけ!」
とありました。最初の「警戒警報イエロー」が原書でどうなっているのか気になりますが、おそらく「Yellow Alert」だけではないでしょうか。もしかしたら「Condition Yellow」かも知れませんが、いづれにしても「レッド・アラート」に合わせて「イエロー・アラート」にするか、もっと良いのは、TVや映画のST翻訳に合わせて「警戒警報(ルビでイエロー・アラート)」「非常警報(ルビでレッド・アラート)」としたいところです。STに馴染んでいる人ほど「警戒警報」「非常警報」の方がスッと頭に入りますし、馴染んでいない人でも「警戒」「非常」と当てはめることで、警報レベルが上がったんだと分かります。
他にもまだまだありますが、長くなったので次回に。
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ミリタリー系の映画やドラマだと誤訳珍訳のオンパレードです。ボギー(敵機)→ミグなど典型ですね。高G旋回に伴う失神(オリジナルではブラックアウト)を「黒眩み」って、そりゃないよ戸○奈○子さん。
戸○さんは、いくつかの映画でかなりコテンパンに叩かれていますね。
翻訳作業って、英語力はもちろんですが、同じくらい日本語力を問われるものだと思います。
英語の文意を理解し、「生きた日本語」に変換しなければならないんですから。